以前、年金で本当に老後安心なのか、ということについて考えました。
今回は同じく将来のことだけれど、人口とは違うことを考えてみましょう。
そして、今回のテーマは資産形成を考えるうえでとても大切な物価になります。
こんな方におすすめ
- 資産形成をどうはじめればいいのかわからない人
- 資産形成をはじめたけれど毎日の値動きに一喜一憂してしまう人
- 投資のいいところばかり言われてイヤになってきた人
目次
物価とは
物価と聞くと大多数の方が「モノの値段のことだろ」と思うでしょう。
もちろん、間違いではありません。
ただ、これから物価について考えていくうえでは次のように整理します。
物価の定義
メモ
物価とは 「モノとサービスの値段」
つまり、モノだけではなく、サービスの価格も含めて物価とします。これは生活をするときに支払う価格全体がどのように変化するかを知りたいからです。
昔であれば、得たお金で食料や生活必需品を買っていました。これらはモノですから、モノの価格だけを追っていればよかったですが、現代では毎月支払うお金のうちかなりの部分がサービスに向けられています。
実際にどのくらいのお金がサービスに向けられているのか調べてみましょう。
家計消費(2021年3月)
やや雑な計算にはなりますが、二人以上世帯の標準的な家計消費のうち、サービスに当たると思われるものは保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽といったものになると考えられます。
これらの消費に占める割合はそれぞれ5%、15%、4%、9%となるので、合計で消費の33%を占めていることになります。つまり、毎月に支払うお金のうち3分の1がサービスに支払うお金だということです。
ですから、このサービスの価格も支払うお金への影響が大きく、これも含めて物価と整理することにしましょう。
物価の推移
では、物価を整理したところで、物価がどのように推移してきたのかを見ていきましょう。
物価を知るための指標としてCPI(消費者物価指数/Consumer Price Index)という指標があります。毎月公表されており、集計する品目もたまに入れ換えられています。
品目が入れ替えられてしまっていいのかと思うかもしれませんが、昔はなかった商品が今よく消費される(例えば携帯が当たります)という風に変化したときに対応できるようになっているわけです。
細かい品目の推移も出ているのですが、物価の全体感をつかみたい場合はコアCPI(全体から生鮮食品を除いたもの)を用いることが多くなります。これは生鮮食品は季節によって相場が変動すること(収穫時期であれば安くなり、収穫時期から外れると高くなる、ということ)が多いからです。
コアCPI(2011年4月~2021年3月)
10年間の推移を見ると緩やかながら物価は上昇していることがわかります。ここ数年でいろいろな食べ物が値上げされている、ということがわかるわけです。
確かに最近では値下げよりも値上げの方がニュースになっていますから、この結果には納得いただけるのではないでしょうか。ちなみにステルス値上げ(値段は変えずに内容量などを減らして単位当たりの値上げをすること)もCPIには計上されていますから、そういったものも含めれば値段が上がっていることには違和感がないのではないでしょうか。
インフレとデフレ
政治ニュースをよく見る人はインフレ・デフレという言葉を聞いたことがあるかもしれません。
物価が上昇することをインフレ(インフレーション)、物価が下落することをデフレ(デフレーション)と言います。つまり、この10年を見てみると日本は緩やかながらインフレをしているということになります。
1前は100円で買えていた缶ジュースが今は120円であったり、確かに少しずつ物価は上がっているように見えますし、インフレだといっても良いのかもしれません。もちろん2021年4月から携帯大手キャリアが携帯料金の値下げを打ち出していて、今後その影響が出てくるので、一旦は物価は下落方向に動くかもしれませんが、その影響が収まっていけば、また価格は少しずつ上がっていくのかもしれません。
ただ、物価が上がるということをモノやサービスの値段が上がるだけだと考えてはいけないのです。
物価を裏側から見る
物価が上がるということを言い換えていくと、資産形成で意識しなければいけないことが浮かび上がってきます。この章では物価を裏側から見ていきましょう。
コインの裏と表
具体的に考えるためにお菓子のCPIを調べてみると2011年4月では93.6でしたが、2021年3月には108になっています。これは大体15%値上げされている、ということです。
100グラムあたりのお菓子で簡単に考えてみましょう。
お菓子(100g) | |
2011年4月 | 100円 |
2021年3月 | 115円 |
ここでこの表を次のように変換します。
お菓子(1円) | |
2011年4月 | 1g |
2021年3月 | 0.87g |
10年前には1円で1g買えていたお菓子が、今では0.87gしか買えません。物価が上がっているのだから当たり前だ、と思うでしょう。
ただ、この言い換えにはとても大切な意味があります。1円の価値が下がった、ということです。
物価はただモノやサービスの値段を示すだけではありません。物価はお金の価値が変化することを意味しているということであり、これがコインの裏表なのです。
物価が資産形成に与える影響
物価はお金の価値が変化することだ、と考えたとき、私たちは資産形成に次のような意識を持たなければならないでしょう。
- 商品を選ぶ際には物価に連動して価格が変わる商品であるかを考えること
- どの程度の期間保有するを決めておくこと(長ければ長いほど物価の影響を受けることになる)
- 物価に対して収益が上がるかを考えること
資産形成をするにあたって、評価軸を持っておくことは長期的にとても有用です。金融機関や不動産会社の言いなりになっていては、本当に自分にとって一番良い資産形成なのかがわからなくなってしまうからです。
この物価という評価軸はすべての商品に対して適用することができます。先ほど言ったように、物価はお金の価値そのものの変化を示すからです。
物価を操る人たち
最後に物価を操る人たちについて説明をしていきましょう。物価を操るのはメーカーでも消費者(私たち)でもありません。もちろんメーカーも消費者も物価に影響を与えるのですが、操ろうと思って影響を与えているわけではないからです。メーカーは収益を上げるために最も適当と思われる価格に設定しますし、消費者はその価格を見て必要度合いに応じて買うかどうかを決めるからです。これは操ろうという意思を持って行われることではないですし、もし仮に操ろうとした場合には罰則等も設けられています。
では、誰が操ろうとしているのか。答えは中央銀行です。日本で言う日本銀行です。そして彼らは物価に目標を掲げているのです。
物価目標
中央銀行は世界各国に存在します。
日本であれば、日本銀行
アメリカであれば、FRB
イギリスであれば、BOE
たくさんの中央銀行がありますが、その多くがインフレ目標を掲げています。そして、先進国の多くが掲げている目標値が年率2%です。彼らは物価が急上昇・急低下せずに安定しておおよそ年率2%程度で推移することを目標としています。
この目標より実績値が低ければ物価がより上がるように、実績値が高ければ物価の上昇が緩やかになるように金融政策を変更するのです。
この2%という数字が資産形成にあたってのヒントになることは間違いがないでしょう。
まとめ
この記事では物価について解説してきました。
資産形成にあたってとても大切な考え方なのでぜひ覚えておいてください。
チェックリスト
- 物価はモノとサービスの値段である
- 物価はお金の価値が変化することを意味している
- 物価は資産形成の大きな評価軸になる
- 物価は中央銀行によって年率2%を目指す